決算の感想
JR東海の20年度決算は上場後初の通期赤字となりました。
JR東海はJRグループの中でも新幹線が売上収益に占める割合が高く、新型コロナウィルスの影響で特に新幹線需要が激減し厳しい業績となりました。
下記のグラフは2015年からのJR東海の新幹線と在来線の売上収益を表していますが顕著に新幹線の売上が在来線よりも大きいことが分かります。
つまり、JR東海 = 東海道新幹線なのです。

JR東海の事業としては新幹線、在来線等の運輸業がメインですが、通流業、不動産事業も行っています。
事業ごとの売上の推移を確認していくと、2021年度は主力の運輸業前年売上1.4兆円から6,000億円弱にが大幅に減少しました。

営業利益は運輸業の赤字が最大で流通業も赤字となっています。
運輸業では赤字幅が約2,000億円と新型コロナウイルスの影響を大きく受けていることが分かります。

令和三年度業績予想
決算で公表された令和三年度(2022年度)の通期業績予想は当期純利益900億円の黒字です。
営業収益が約4,000億円回復(前年比約150%)の見込みとなっています。

令和3年度 は運輸収入(新幹線+在来線)がは平成 30 年度対比で66%となることが前提となっているようです。
4月度の月次利用状況の実績を確認すると新幹線は39%、在来線は特急等が35%、名古屋近郊が74%であるため業績予想を達成するためには新幹線と特急等の利用者数の回復が必要となります。

リニア総工事費1.5兆円増加
東京・品川ー名古屋間のリニア中央新幹線の総工費は従来計画から1.5兆円増えて7兆円となる見込みとなりました。
当初の工事実施計画時の見込み額が5.52兆円でしたので今回の1.5兆円が増加となり、総工事費(品川・名古屋間)は7.04兆円となりました。
工事費増の理由は大きく以下の3点です。
①難工事への対応(+0.5 兆円)
②地震対策の充実(+0.6 兆円)
③発生土の活用先確保(+0.3 兆円)
重要となる資金の確保については、運輸収入(幹/在) 令和3年度 66%、令和4年度 80%、令和5年度 90%と段階的に回復し、令和6年度以降、令和 10 年度までに 100%となれば新規借入金1兆円を加えることでキャッシュフローは賄えるとのことです。
よって、令和2年度は2,000億円の赤字でしたが、令和3年以降は着実に業績回復をしなければリニアの工事費の捻出が難しくなりますので今後の業績に注目です。
設備投資額の推移は以下のグラフの通りで、中央新幹線(リニア)の投資が19年度くらいから増加してきており、今期もかなり全体の設備投資の50%以上を占めます。

感想
4月以降、緊急事態宣言も発令されており業績回復には時間がかかることが予想されます。
また、リニア開発は資金調達面でのリスクと静岡県との交渉も残っているため課題山積み状態です。
既に工事着工をしており引き返すことは不可能だと思いますが、リニア開発の必要性もコロナウイルス蔓延によるテレワークでの出張の減少など本当に需要はあるのか?と問い直す必要はあるはずです。
一方で現状のJR東海は東海道新幹線に収益を依存しすぎており(一本足打法状態)、災害時に新幹線が運行できなくなるリスク対応で内陸にリニアを開通させたい思惑があると思います。
【引用元】
https://company.jr-central.co.jp/ir/brief-announcement/detail/_pdf/000041057.pdf
https://company.jr-central.co.jp/ir/brief-announcement/detail/_pdf/000041056.pdf
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