2020年3月期業績
連結経営成績
売上高は6兆8,880億円(前年比▲1%)、当期利益は▲5%の3,915億円でした。
利益減の主な要因として原油・ガス価格の下落及び石油・ガス開発関連資産等の減損計上したことが挙げられます。
売上高 6兆8,850億円 前年比 ▲1%
当期利益 3,915億円 前年比▲5%
項目 | 2019年3月期(百万円) | 2020年3月期(百万円) | 増減率(%) |
売上高 | 6,957,524 | 6,885,033 | ▲1% |
経常利益 | 584,338 | 534,320 | ▲9% |
当期利益 | 414,215 | 391,513 | ▲5% |
連結キャッシュフロー
連結キャッシュフローを確認すると営業キャッシュフローが大幅に増加していることが分かります。
三井物産の場合は投資をしている資源の価格下落やインフラの減損処理が当期利益に反映されるため、どちらかというと実際のキャッシュの流れ特に営業キャッシュフローがしっかり稼げているか?が重要だと思います。
営業キャッシュフロー 2019年3月期 4,106億円 ⇒ 2020年3月期 5,263億円
主要な増加要因は
①金属資源分野における豪州鉄鉱石事業における鉄鉱石販売価格の上昇
②機械・インフラ事業おけるプロジェクト開発報酬、リース会計基準変更による影響
となっています。
項目 | 2019年3月期(百万円) | 2020年3月期(百万円) |
営業キャッシュフロー | 410,670 | 526,376 |
投資キャッシュフロー | ▲719,036 | ▲185,230 |
フリーキャッシュフロー | ▲308,366 | 341,146 |
セグメント別 当期純利益
2020年3月期のセグメント別に稼いだ利益の比率を確認すると、資源分野の金属資源44% 、エネルギー14%となっており、資源分野が全体の約60%を占めています。
その他、機械・インフラ事業も21%あるため、資源価格及び世界景気に業績が大きく左右されやすい構造となっていることが分かります。

セグメントと大まかな事業内容は以下の通りです。
セグメント | 事業内容 |
金属資源 | 鉄鉱石・原料炭・銅・リサイクル |
エネルギー | 石油・ガス・再生可能エネルギー・新エネルギー |
機械・インフラ | 発電・海洋・ガス配給・自動車・船舶 |
化学品 | メタノール・タンクターミナル・コーティングマテリアルなど |
鉄鋼製品 | 鉄鋼製品の調達・加工・製造・供給(モビリティ/インフラ/エネルギー向けなど) |
生活産業 | 食料、ヘルスケアなど |
次世代・機能推進 | データ・IOT・AI・サイバーセキュリティなど |
来期業績予想
業績予想は今期後半に新型コロナによる影響が回復する前提での算出となっているようです。
当期利益
2020年3月期実績 3,915億円
2021年3月期予想 1,700億円(57%減)
資源分野の割合が高いため、原油価格などの急落で資源分野の採算が悪化の影響が大きくなる予想となっています。
セグメント別の利益実績と予想を比較すると、金属資源とエネルギー分野での来期の利益減少幅の予想は▲1,230億円となっています。
また、新型コロナウイルスの影響により機械・インフラ事業や化学品など幅広いビジネスで需要が低迷すると考えられます。
機械・インフラで利益の減少が▲525億円、そのほか生活産業でも▲270億円の減少など幅広い事業で利益減少が見込まれます。
セグメント | ①2020年3月期(百万円) | ②2021年3月期(百万円) | 差額(②-①) | 増減率(%) |
金属資源 | 1,833 | 1,200 | ▲633 | ▲35% |
エネルギー | 597 | ▲597 | ▲100% | |
機械・インフラ | 875 | 350 | ▲525 | ▲60% |
化学品 | 223 | 200 | ▲23 | ▲10% |
鉄鋼製品 | 47 | 50 | 3 | 6% |
生活産業 | 320 | 50 | ▲270 | ▲84% |
次世代・機能推進 | 146 | 50 | ▲96 | ▲66% |
その他 | ▲126 | ▲200 | ▲74 | 59% |
合計 | 3,915 | 1,700 | ▲2,215 | ▲57% |
配当について
配当予想
配当の原資となる基礎営業キャッシュフローは21年3月期はコロナの影響もありますが、4,000億円を見込むため、配当予想は今期同様の80円/株となりました。
減配や無配を決定した企業が多かったため、配当維持は評価できると思います。
自社株買い
自社株買いについては事業環境、市場動向を勘案の上、機動的に推進するとの発表となっているため実施については不透明となっています。
2020年3月期の株主還元振り返り
①配当の支払い総額は1,400億円
②自社株買いに580億円
⇒よって合計1,980億円(①+②)の株主還元を実行となっています。
配当金の推移
参考に2005年度からの配当の推移を確認します。
コロナの影響もあるため2021年3月期も配当を維持できるかが注目です。

まとめ
三井物産の事業ポートフォリオは資源分野への比重が高く、中期計画でも非資源分野への転換を目指すとされていました。
やはり原油価格などは世界情勢に影響を受けやすいので業績が大幅にぶれやすいのが商社の特徴となっています。
コロナの影響も次回決算以降で大きく反映されてくると思うので引き続き注目していきます。

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