「世界No.1の総合モータメーカー」として有名な日本電産の事業概要、業績、配当について見ていきましょう。
日本電産 概要
事業内容
日本電産は総合モータメーカーとして中核事業は①超精密小型モータ ②車載事業 ③家電・商業・産業向け事業の3つとなります。
特に注目されているのがEV化で需要が見込まれる車載事業です。
①超精密小型
モータをハードディスクドライブ(HDD)やパソコンのファン用、家電など
HDD用モータは世界シェア85%を誇るそうです。

IR資料より
②車載用
1台の自動車に搭載されるモータの数が100個以上となっており、今後も電動化が進むと予想されるため需要増が見込まれます。
③家電・商業・産業用
空調、洗濯機、乾燥機などの主要家電向けモータやコンプレッサー、住宅・商業設備用のモータなど
空調用AC・DCモータ

製品グループごとの売上構成
精密小型モータと家電・商業・産業用が全体の60%程度を占めていますが、近年では車載用が大幅に売上を伸ばしています。
今後の日本電産の成長はEV・PHV向けの製品の売上増加が必須です。

2019年3月期 業績
まずは、日本電産の2019年3月期の業績はを簡単に振り返ります。
売上高 1兆5,348億円 (過去最高 )前年比4%増
当期純利益 600億円 前年比45.4%減
一株利益 102.13円
一株配当 57.5円 配当性向 56%
となっています。売上高は過去最高を更新しましたが当期純利益は▲45.4%と大幅に減少しています。
減益の理由は?
減益の理由としては下記の3点が説明されていました。
①車載向け事業での開発や生産立ち上げに向けた先行投資 約140億円
②買収にかかる費用の増改 約30億円
③事業譲渡による損失157億円
先行投資等により一時的に費用が発生していますが、先行投資をしている車載部門の売上が 461億円増加しているため来季以降の業績に注目です。
来期の業績予想は?
コロナの影響で来季の業績予想を開示しない企業が多い中、日本電産は当期利益40%増の増益予想を発表しました。
売上高予想 1兆5,000億円
当期利益予想 1,000億円
百万円 | 19年度実績 | 20年度見通し |
売上高 | 1,534,800 | 1,500,000 |
営業利益 | 110,326 | 125,000 |
[営業利益率] | [7.2%] | [8.3%] |
税引前利益 | 106,927 | 125,000 |
当期利益 | 60,084 | 100,000 |
過去5年間の実績と比較すると売上高は最高だった201年度に対して微減、当期利益は2018年度の最高益1,308億円から約300億円の減少となります。

2019年度に対して利益増加予想の主な理由
①車載事業であるEV用駆動モーター事業の成長が見込まれる
写真は日本電産のE-Axle.
EV駆動用のモータ、ギヤ、インバーターが統合されたシステムとなっています。
最近は自動車メーカーから部品単品よりも「システム化」された部品の需要が高まっており、日本電産はEV用の駆動モータをギヤとインバーター一体型として提供できる強みがあります。
特に中国の自動車メーカーからの引き合いが強いようです。

IR資料より
②在宅勤務や電子商取引の拡大により、HDDやデータセンターなどで冷却用に使われる精密小型モータの売上増が見込まれる
スマホ、HDD、データセンターは熱を発するため冷却する必要があるため小型モータのニーズが高まります。

配当の状況
2021年3月期配当予想
第2四半期末 30円
期末 30円
合計 60円
予想配当性向 35.2%
2020年4月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っています。2020年3月期については、当該株式分割前の実際の配当金の額を記載しているため実質増配となります。
①第2四半期 | ②期末 | ③合計(①+②) | |
2020年3月期実績 | 55円 | 60円 | 115円 |
最新予想(株式分割後) | 30円 | 30円 | 60円 |
年度別配当推移
2008年以降は基本的に増配傾向となっています。
来期については株式分割が影響しているためグラフ上は減配に見えてしまいますが、60円×2=120円となるため実質増配となります。

キャッシュフローを確認
減配の理由として他にもキャッシュフローの推移を確認すると分かります。
オレンジ色が営業活動により稼ぎ出したキャッシュを示し、青色が投資活動により使ったキャッシュを示しています。
フリーキャッシュフローは(営業活動によるキャッシュフロー) – (投資活動によるキャッシュフロー)となりますが、2019年度は大幅にキャッシュが減少しています。
この減少分を金融機関、社債などで補うということになり、財務が悪化します。
日本電産の2019年度の配当支払総額約300億円も利益剰余金の取り崩しや借入金などから捻出していることになるため減配はやむなしと思います。
今の日本電産は投資にキャッシュを多く使う成長フェーズであると言えます。

まとめ
車載事業など今後伸びしろのある事業が多くあります。
電動化によりモーターの需要は増加し、モーター単品だけでなくインバーター一体化などしてシステム化して提供できるところが日本電産の強みです。
2020年度はコロナの影響もあり車載事業の伸びは限定的かもしれませんが長期的に期待しています。

コメント
はじめまして。
つい、気になったのでコメント失礼します。
配当金が減額となったのは2020年3月31日を基準として、普通株式1株につき2株の割合で分割したことが大きいのではないでしょうか?
それまで保有していた者から考えるとトータルの配当金としてはほぼ変わらない(むしろ予想通りの場合は増額)となりますので・・・
当方としてもこちらの株にはこれからも期待しています。コロナに負けないで欲しいですね。
コメントを頂きありがとうございます。
2020年4月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っていましたのでその旨記事に反映させました。ご指摘を頂きありがとうございます。