いつもお世話になっているJR東海の決算発表がありましたので事業紹介と決算内容を簡単に解説します。
JR東海は思っていた以上に新幹線で売上・利益を上げていることが分かりました。新幹線がドル箱と言われるわけです。
事業紹介
JR東海の事業内容をまず確認していきましょう。
大きく3つの事業から成り立っています。①運輸業 ②流通業 ③不動産業
もちろんメインは①の運輸事業ですが②流通業や③不動産業も近年成長している分野です。
①運輸業
運輸事業はJR東海の事業の中核であり、新幹線鉄道事業、在来線鉄道事業、超電導リニアによる中央新幹線などがあります。


②流通業
鉄道の利用者や多くの人が集まる駅は、JR東海にとって重要な経営資源となっています。この資源を活用し、商業施設、オフィス、ホテルなどの都市機能を集積した「JRセントラルタワーズ」や「JRゲートタワー」などの高層複合ビルの開発を手掛けています。

③不動産業
駅構内の飲食店街の運営、マンション販売など
JR東海グループでは、事業を積極的に展開し、収益基盤の拡大や多角化によるグループの総合力強化を図っています。
社宅跡地をはじめ、保有する不動産の有効活用に取り組んでいます。愛知県刈谷市の社宅跡地において「セントラルガーデン・レジデンス」ブランドの高層マンションを開発しました。


売上高と営業利益の割合
事業ごとの売上高の割合を確認していきましょう。主な3つの事業は①運輸事業 ②流通業 ③不動産業ですが、約7割が運輸業の売上となっています。

次に営業利益の割合を確認するとなんと、94%が運輸業で稼いでいることが分かります。多角化しているとはいえ、やはり新幹線や在来線などの鉄道が稼ぎ頭には変わりはないようです。

決算内容
決算内容を簡単に見ていきましょう。売上高は前年比▲1.8%の1兆8,446億円、当期純利益は▲9.3%の3,979億円となっています。
売上高 1兆8,446億円 前年比▲1.8%
当期純利益 3,978億円 前年比▲9.3% 純利益は従来予想から281億円下振れ 8年ぶりの減益

自己資本比率は約40%、キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローで約6,000億円のキャッシュインとなっていますが同等規模の積極的な投資活動も実施しているようなので期末の現金及び現金同等物残高は前年とほぼ同等の約7,600億円となっています。

長期債務の推移が気になったので紹介します。18以降長期債務が大きく上昇し約4兆8000億円となっていますが、中央新幹線(リニア)建設のための長期借入金の借入のため債務が大幅に上昇しています。

配当金
配当金は上期 75円 下期75円 通期で150円となりました。 配当性向は7.4%に過ぎず配当を出して投資家に還元するというよりも、成長のために投資活動にキャッシュを使っていると考えられます。 BSを確認すると期末での利益剰余金が約3兆6000億円あるため、純資産に対する配当率は0.8%であり業績が悪化しても減配リスクの少ないかなり余裕のある水準です。
また次期の配当は業績予想の算定が困難であるため、中間及び期末の配当はいずれも未定となっています。

新幹線 月次利用者の推移
JR東海の稼ぎ頭である新幹線の輸送量推移を確認していきます。コロナ騒動により2月以降から極端に乗客が減少し3月については前年比14%まで下落しています。
20年1月 前年比 92%
20年2月 前年比 42%
2020年3月 前年比 14%
在来線の月次利用者の推移
在来線の輸送量の推移を確認すると新幹線と比較して前年からの減少は少ないものの3月には特急等及び名古屋近郊で大幅な減少となりました。
20年1月 前年比 特急等87% 名古屋近郊98%
20年2月 前年比 特急等42% 名古屋近郊73%
2020年3月 前年比 特急等16% 名古屋近郊54%
まとめ
下記のグラフは新幹線と在来線の売上の推移を示しています。新幹線の売上が約1兆3,000億円に対して在来線は1,000億店程度となっているため、JR東海としては新幹線の売上減少が大きいと売上・利益の減少が大きいことになります。新幹線の月次利用者数は2020年3月は前年比14%(86%減)となっているので来期以降の業績への影響が大きいことが予想されます。また、JR東海全体の売上約1兆8,000億円に対してもドル箱と言われる新幹線売上の割合が非常に高いため新幹線にかなり依存していることにもなっています。


コメント